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『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』

さて、先週吉田昌郎さんの見舞い行ってきましたが、そのご報告。個人の健康のことであるので、あまりこと細かくレポートするのは控えさせていただくが、一部報道もされてるので、現状を簡単に書いておきます。

昨年末に食道ガンが発見されたあと(本人曰く「ステージ3」) 手術のため入院(このとき福島第一原発所長を退任)。3月にいったん退院のあと、4-5月に抗ガン治療のため再入院、6月に退院し、自宅療養をしながら再起を図っていました。7月には福島現地の集会のためにビデオメッセージを発信したり...、現場の当時の状況を本の出版により伝えるための取材に応じたりしていましたが、そのときに脳梗塞を発病し緊急入院。
現在はリハビリのための病院に転院し、回復のためにトレーニング中です。

今回見舞いにいったとき、少し話しもできましたが、まだまだ回復には時間がかかりそう・・・・でも奥さんによると「だいぶ良くなってきた」そうです。

本人も、あの事故について語り尽くしていないだろうし、何よりも事故そのものが収束していないのだから、世間に対してもいろいろ発信したい想いでいっぱいだと思います。

7月に倒れる直前に取材を受けた ノンフィクションの本が出版されています。(昌郎さんだけでなく、多くの現場最前線で戦ってくれた人たちに取材して書かれています)
門田隆将さん著 
『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』http://www.php.co.jp/news/2012/11/1128.php
です。
見舞いに行ったときこの本を一冊もらいましたが
昌郎さんが病床で言っていたのは「この本は本店の連中に、読んでもらいたい」ということ。・・・それだけ「現場はこういう状況だったんだ、本店の社員はそれを腹に据えて事故収束のために働いてくれ」という想いでいっぱいなんだと思います。
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同時に、今年3月に見舞いに行ったときに言っていたのが「これから事故収束に働けるベテランの現場作業員が(被爆により)足りなくなる。ヤクザとかが作業員の派遣にからんできたら大変になる」という趣旨の心配をしていまた。・・・・事実現状がそうなりつつありますね。

本人が健康なら、もっと前面にでて色々語ってくれるのだろうと思いますが、現時点ではこの本が一番現場の状況をリアルに伝えてくれていると思うので、是非読んでみてください。

見舞いからの帰路高速バスの中で一気に読みました。
政府事故調査委員会の調査報告書は事実をかなり忠実に調べて書かれていますが、このノンフィクションは政府事故調が書き表せなかった「現場の叫び」を再現してくれています。

あの原発事故は本当に最悪に近い現状ですが、それでもどん底のどん底に落ちる1歩手前で食い止めたのは、昌郎さんはじめ現場で戦ってくれた皆さんの機転と努力のおかげであるとつくづく判りました。
僕がいう「どん底のどん底」というのは、激しい核爆発が連続し、福1だけでなく、福島第2発電所も、東海村の原発も運転員が放棄せざるを得ないような大事故ということです。

冷却用の全電源喪失に至ったとき、現場運転員の共通認識は「とにかく冷却水を入れて冷やす」ことだったようで、当直の運転員の人たちは震災(津波)後の極初期の段階で水を炉内にいれるためのラインを必死で工作しています。
また、吉田所長は消防ポンプを直列につないでの送水が必要になることを予見し、事故直後から自衛隊や関係機関に消防ポンプの出動を要請し、これが実際に冷却作業で最大の功を奏しています。

「闘う武器がなんにも無いときでもあきらめない」現場の底力というものを感じました。

いまこうやって、FBであれこれ書くことができるのも彼ら運転員・作業員の献身的な努力があったからこそです。
彼らの努力の上に、この震災後2年弱の極めてもろい「安定」が保たれているにすぎません。

いわば捨て身の「時間かせぎ」。

福一の現状は全然収束していないうえに、4号炉の使用済み核燃料棒プールのキケンさも震災直後からいっこうに改善されていません。手がつけられないのです。
現時点でまた大きな地震があったら、「東日本壊滅」の状況はそのままなのです。

いま、総選挙で原発の扱いが焦点の一つになっていますが、ともすれば原発の事故を「隠そう」とか、「あれは終わったこと」にしたいといった原発推進者・大手マスコミの目くらましに騙されないで、賢明な選択をしてもらいたい と思います。

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